aeonnous’s blog

Aeonnous教授の隠逸生活と意見

【音盤渉猟】典雅にして優しい癒し バッハ「フランス組曲」by Yuan Sheng

昔、某国営放送で、「ピアノのおけいこ」という放送がありました。

 

中村紘子先生のご教授で、良家の子女とおぼしき生徒が一生懸命難しい曲を弾くようすを見るのがすきでした。

 

1970年代はじめごろ、私の家にはまだピアノもなかったのですが、フランス組曲の回が続いていたのにひきこまれ、こんな世界があるのだ、と心に沁みるものがありました。

それが、私のバッハとの出会いでした。

 

たしか白黒の放送だった記憶があります。記憶が白黒になってしまったのかもしれません。。。フランス組曲というとこのシーンを思い出します。

 

このYuan Shengさんの演奏、ピアノによる演奏で、情感情緒を歌うものがあります。しっとりとした演奏で、そうした過去の哀歓に満ちた思いでを想起させるものがあります。

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チェンバロによる厳格な学術的なバッハ演奏という古楽復興のとりくみもきらいではありません。冷厳高踏にも聞こえるレオンハルト盤に傾倒していた時期もありました。しかし、最近、初老の門も近づくと、哀歓を尽くした「やさしい」演奏に吸い寄せられてしまいます。

 

「みなさまの」国営放送がもっていたドイツ教養主義の伝統は、いつしかなくなってしまいました。今の教育放送の惨状は見るに堪えません。そこまで媚びないと勉強しなくなったんでしょうか?言葉遣いもぞんざいな「〇〇ちゃん」が教養番組といわれると、昔の中村紘子先生の上品な会話を思い出し、とても悲しくなるのは、やはり初老の感傷でしょうか。だから、私は、テレビを捨てて、国営放送は二度と見ないのです。